タマノカンアオイ
今回紹介するのはタマノカンアオイ。新緑の多摩丘陵の雑木林を代表する植物です。といってもキンランなどのようなきらびやかな存在ではありません。花は肉厚の暗い紫がかった茶色で、ラフレシアの多肉質の花とつながるちょっとグロテスクなイメージです。葉っぱの下で落ち葉に半分埋もれた状態で咲きますから、知らないと全く気がつかれることがないのではないでしょうか。
それでも多摩丘陵を「代表」するというのは、多摩の名を冠した名前(多摩の寒葵)から分かる通り、カンアオイの仲間の中でも多摩丘陵とその周辺部にのみ分布する多摩地域の固有種だからです。種子はアリによって運ばれる程度ですから、分布拡大の速度は遅く、限られた地域にしか生育していません。その生育地もニュータウンの開発に伴い急激に減少しており、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
学校の裏山でもほとんど見かけることがなくなってしまいました。私は稲城市内の雑木林に観察に出かけています。もう時期が終わりかけていますが、桜ヶ丘公園でも見ることができます。私が初めてこの花にお目にかかったのは、稲城市のI高校勤務になった30年ほど前のことです。敷地内に残されていた雑木林にキンランやエビネなどとともに残されていました。多摩大学の一角にも雑木林と多摩丘陵の貴重な植物たちを復活させたいですね。
2016年5月9日 有岡 淳
カテゴリー:植物
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