タイコウチ

黒川の田んぼで見つけたタイコウチ

黒川の田んぼで見つけたタイコウチ

5月3日、本校の自然科学部は新中学1年生も参加し、いつもより足を伸ばして学校周辺の自然観察を行いました。学校を出発し、尾根幹線沿いの「多摩よこやまの道」から川崎市の黒川に抜け、稲城市の雑木林や谷戸田を歩いて学校に戻る6~7㎞のコースです。

多摩丘陵は古来「多摩の横山」と呼ばれ、万葉集にも、「赤駒を山野に放し捕りかにて多摩の横山徒歩ゆか遣らむ」と登場します。これは防人の兵役につく夫を送り出すため、この丘陵で別れを惜しんだ妻の心情を歌ったものです。その「よこやま」の地名をつけて多摩丘陵の尾根筋に整備された散策路が「多摩よこやまの道」です。

その「多摩よこやまの道」から南に下ると川崎市の黒川地区に出ます。ここはかつての谷戸地形を利用した農業が受け継がれ、昔ながらの里山の光景を今に伝える心和む場所です。その奥まった田んぼの一角で見つけたのがこのタイコウチです。田んぼの水路のわずかな水たまりに一匹だけ見つけて採集しました。

タイコウチはタガメなどと同じカメムシの仲間の水生昆虫です。タガメは東京都ではほぼ絶滅種となってしまったようですが、タイコウチはまだ所々で見ることができるようです。といっても採集したのは正確には神奈川県ですが・・・。タイコウチの特徴はおしりから伸びた呼吸管。頭を少し下げて呼吸管をシュノーケルのように水面から出し、さながら忍者の水遁の術のように空気を取り入れています。エサはオタマジャクシや小魚などで、口針を刺して体液を吸収します。前脚を交互に動かして泳ぐ姿がまるで太鼓を打っているように見えることからタイコウチと呼ばれていますが、英名は水サソリ(Water scorpion)です。こちらの方がかっこいいと思いませんか。

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